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2015/10/04

SRの台車5態 アルストム・軸バネ・ウィングバネ・軸バネ・Sミンデン

名鉄SR車の台車を見てみましょう。

私は、台車大好き人間です。メカが露出していてわかりやすい。いろいろな考え方の台車があって、見ていても面白いからです。

さて、名鉄SR車の台車。
結論を先に言ってしまうようですが、名鉄最初の高性能車5000系は、SR車の中でも先進の考えが詰まった車輛と言えるでしょう。


5000系の台車。一応、「初代」と言っておきます。
FS307。高性能車としての5000系の特徴を簡単にまとめると、張殻構造の軽量車体と、バネ下重量を軽減する平行カルダン駆動、M+M’のユニット構成によるオールM編成、ということになると思いますが、他のSR車にない、もう一つの特徴を持っています。それが、台車。
昭和20年代末に高性能電車が続々開発されたころのテーマの中に、上記の3つの他に高速走行に対応する乗り心地の良い台車、というものがあったはずです。その頃の台車開発において高速時の走行安定性確保のためには「輪軸蛇行」の排除が重要とされていました。
車輪は、車軸の両端の軸箱によって台車に取り付けられています。軸箱は、台車枠側の軸箱守(ペデスタル)に挟まれて、その空間の中を上下動(若干の左右動も)するわけですが、軸箱と軸箱守の間でスムーズな摺動のために許容された空間があり、ある瞬間で捉えると、前後どの方向にも動き得る状態が存在します。これにより、軸箱が前後に動いてしまい、常に固定軸距が変動し得る状態が起きてしまうのが「輪軸蛇行」。軸箱を軸箱守で受ける方式の宿命なのです。
高速走行時には、各車軸が勝手な方向に動いてしまう輪軸蛇行動が乗り心地を悪化させるだけではく、脱線の危険も増大します。
そこで、この頃の台車では、「輪軸蛇行」を「軸距の固定」という形で抑制し、乗り心地の向上と走行安定性を確保する試みが各種提案されていました。
そのうちのひとつに、アルストム式があります。2つのリンクで軸箱を支える方式。見るからに軸箱の前後動はない構造です。
なお、FS307は、乗り心地が「悪い」と評されているようです。
確かに軸箱支持は先進的でしたが、軽量化のために固定軸距を短くしたコンパクトな台車だったために、台車蛇行が起きやすかったのではないでしょうか。輪軸蛇行がない分、台車全体として蛇行してしまう現象が逆に起きやすくなったのでは?と思っています。
国鉄には、アルストム台車の導入例はありません。小田急が長く愛用していましたね。


5200系の台車です。FS315。
ある意味、FS307とは真逆の台車。
軸箱支持はペデスタル式に戻っています。一方、固定軸距は長め。
FS307でうまくいかなかったところを、とりあえず元に戻した、というところでしょうか・・・。
コンパクトだったFS307と比べて、ずいぶん長~く見える台車になっています。
軸バネも、単に軸箱上に1本あるだけのタイプで、枕バネがコイルバネとなってオイルダンパがつきボルスタアンカ(この場合は枕バネと台車枠を結ぶタイプ)があるものの、原理的にはDT13あたりと変わらない、軸バネ式台車です。


5500系になると、軸箱支持はペデスタル式であるものの、軸バネがウィングバネ(軸箱の下から両側に伸びたバネ受けと台車枠の間に両側2本の軸バネを挿入したもの)に変わった、FS326。
ウィングバネ方式は、ペデスタル式であるものの軸バネの長さが長くなるので乗り心地向上には役立ったのではないでしょうか。
国鉄で言えばDT23・24世代の台車ですが、枕バネはコイルバネのままです。


パノラマカーのFS335。
枕バネを空気バネにして車体に直結させた、これまでのSR車の台車とは根本的に異なる台車ですが、軸箱支持は普通にペデスタル式。空気バネの柔らかさで振動を吸収するため、軸バネは軸箱上の1本というシンプルな台車です。
国鉄で言えばDT32世代と思いますが、DT32は、軸箱支持はウィングバネ(オイルダンパ付)。DT32・TR69の場合は枕バネの空気バネが車体直結ではありません。

このように見てくると、輪軸蛇行をなくすという高速台車の課題のひとつに正面から取り組んだ台車は5000系のFS307だけでした。軸箱支持方式に関しては、名鉄はかなり保守的だったと言えるでしょう。
とはいえ、最高速度がせいぜい100キロ程度だったので、こんな程度でさほど問題はなかったのだと思われます。


パノラマカー7000系8次車以降と7700系で採用された、FS384。
FS307のアルストム式以降はペデスタル式軸箱支持に戻っていた名鉄が久しぶりに採用した輪軸蛇行抑制方式は、Sミンデン式でした。
軸箱を両側から板バネで支えることで軸距を固定したミンデン式の発展型で、台車中央側から伸びた2本の板バネで軸箱を支える方式。今では非常に採用例の多い方式ですね。

最高速度が100キロ(当時)、さらに言えば100キロ出せる区間はさほど多くはなく支線区での運用ではたいした速度で走れない線形の名鉄では、本格的な軸距固定方式の軸箱支持は必ずしも必要ではなかったのかもしれませんね。オイルダンパなどの振動減衰装置がないころは、軸箱と軸箱守の間の遊びがカーブ通過をスムーズにしていたとも言えますし。


番外です。

なお、AL車、HL車での採用例が非常に多かったイコライザ式台車は、軸箱支持方式こそペデスタル式ではあるものの、軸箱上部にイコライザがはまり込むことで軸距を固定していました(正確に言えば軸箱の下部はブレますが)。昔の高速台車にイコライザ式が多かったのは、この理由にもよるのだと理解しています(アメリカでは結構新しい車輛でもイコライザ式だったりします)。

※細かい理屈の一部は省略していますので、あまり突っ込まないでくださいね。

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